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油圧シリンダーのシール交換(パッキン交換)やシールトラブルの要因と注意点

油圧シリンダーのシール交換(パッキン交換)について

こんにちは、ビーエスパッキン㈱ 部品課の安川です。
長い間シール交換のためのシールキットの販売を行なっていると、さまざまなトラブルに遭遇します。
ある程度油圧ショベルを稼働させるとロッドやシリンダーにトラブルが起き、それに合わせてシール類も損傷を受け劣化していきます。
それについては当然シール交換の必要性は出てくるのですが、ロッドやシリンダー以外のトラブルで原因が特定されないことも少なからずありますが、詳細を検証できたものに関しては、ほとんどが人為的なミスによるトラブルのように感じます。

今回はロッドやシリンダー以外の原因で、シールの問題が起きやすい要因について少しお話しさせていただきます。

要因①:組み付け時の異物残留・作動油中の異物・配管内のゴミ・異物の噛み込みなど

ロッドやシリンダーに何の問題もなく、パッキンを新品に交換したはずなのに油漏れが止まらないと言う場合にわりと起こりやすいトラブルです。
みなさんシリンダーを分解して古いパッキンを外された時に、取り外したハウジングをきれいに掃除はされていると思いますが、なかなか全てを完璧に行うことは難しいかもしれません。例えばロッドシールが入るハウジング部などは溝の手入れがしづらいため、錆やゴミをきれいに落としたつもりでも錆カスや鉄粉・残留物が残っていたりすることもあります。
その場合は一旦パッキンを取り外し、装着部分を洗浄しなおし、きちんと乾燥させた上でグリスや潤滑油をしっかり塗ってパッキンを再交換すれば油漏れは止まります。
パッキンを交換したばかりなのに油漏れが止まらない!と言われた場合、パッキンに問題があるのでは…と言われることもあるのですが、原因を調査させていただいた場合に1番多いトラブルはほぼこのケースですね(_)
きちんと洗浄をしてしっかりと乾燥をさせた上で、きちんとグリースなどを塗布してのシール交換をお勧めします。

要因②:シール装着時の傷など

こちらのトラブルもシール交換した直後に油漏れが起きやすいトラブルです。
シールをハウジングに装着していく時に、シールの形状やハウジングの奥行きなどが深いために、パッキンが固く取り付けづらいこともあります。その場合に手だけでは装着するのは難しいので治具などを使って装着される方が多いと思います。ただ気づかないうちにその治具によってパッキンを傷つけてしまったままで装着してしまうこともあります。
いざ組み終わってシリンダーを動かしてみると、シリンダー内部には高圧力が一気にかかります。組み込んだパッキンに少しでも傷があると、見た目にはわからなかったほんの小さなキズに高圧力がかかってしまえばパッキンは瞬時に破損し、パッキンの効果はまったくなくすぐに油漏れを起こします。
装着時にドライバーなどを使って装着される方もおられますが、ドライバーの柄をうまく利用したり、尖っているところを丸くなるように削ってパッキンに傷がつかないような工夫もされておられますね。傷をつけてしまった場合は当社では単品でそのパッキンだけでも販売は可能なので、無理に装着はしないでください(^.^)

それとウレタンのロッドシールが硬いからといって、お湯の中で温めるというのは絶対にしないでください。ウレタンは材質として水に弱く、加水分解を起こしてしまい耐久性が著しく低下する可能性があるので絶対にお勧めしません。

シール交換時の注意点として以下のような注意点が挙げられます。
①シールの取り付け向きを逆向きに装着しないこと。
②シールには切粉・糸くず・異物などがつかないように気をつける。
③シールにはグリース・潤滑油などを塗り滑りやすくして装着する。
④治具などを使って装着する時は、シールを傷つけないように扱う。
⑤無理にシールをねじりすぎたり、引っ張りすぎないように気をつける

ちなみにYouTubeで「油圧シリンダー シール交換」「油圧シリンダー パッキン交換」などで検索すれば、いろんな方がシール交換の手順を掲載されているのでわたしもよく勉強させてもらっています(^-^)
みなさんいろんな工夫をされていてかなり参考になると思うので、一度検索されてみるのも面白いですよ♪

要因③:シリンダー自体を他の油圧ショベルと入れ替えてしまう。

シリンダーから油漏れをしていても現場で作業を止められないという理由から、シリンダーを他の油圧ショベルの物と取り替えてしまう方がまれにおられます。例えば、⚪︎⚪︎-2型と言う油圧ショベルからの油漏れの油圧シリンダーを、その機種の後継機である⚪︎⚪︎-3型の油圧シリンダーの物とシリンダーごと入れ替えてしまうということです。まさかそんなことをと思われる方も多々おられると思いますが、諸条件がそろえばとりあえず動かすことはできるようです。ただとりあえずは動くものの圧力のかかり方は各機種によって異なるため、シールキットの内容も異なってきます。なのでお客様からのご注文で⚪︎⚪︎-2型のシールキットをお送りさせていただいても、中身が違うというトラブルが発生します。さすがにシリンダーが入れ替わっていては、どうにも対応することはできません。各重機メーカーさんも各シリンダーにかかる圧力などを計算してシールキットの構成を設定しているため、違うシリンダーを入れ替えてとりあえずは動くかもしれませんが、シールの耐久性はかなり低下する可能性はあるのでこちらもお勧めはできません。

その他の要因
ロッド表面の傷や打痕・異物の噛み込みによるシール破損。
作動油やグリースなどの潤滑剤とシールとの不適合。
シリンダーチューブ内のエアー抜きが不十分な状態で急激な圧力をかけてしまことによる焼損など…

シール交換を行ったとしても、シールの耐久性はいつもまったく同じではありません。
油圧ショベルを過酷な条件で扱い続けてしまった場合はシールの耐久性はどうしても落ちてしまいます。
また上記で説明させていただいたように、古いシールを交換する時に洗浄がきちんと行われているか、シールが正しく取り付けられているか、作動油との適合性、粉塵などの多い場所での作業かどうか…などの使用環境の違いでも、シールの耐久性は大きく変わってきます。

細かな要因はシリンダーを分解してみないものわからないことが多いのですが、ひとつの参考にしていただければと思います。

もし何かわからないことがあればお気軽にご質問ください〜(^_^)

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